裏側矯正はメリットも大きいが、滑舌が悪くなる場合もある

外見上矯正器具が見えにくいという、大きなメリットを持っている裏側矯正ですが、表側矯正に比べてデメリットもあります。そのひとつとして、滑舌が悪くなるということが挙げられます。

滑舌が悪くなるのは主に舌の問題です。舌は発音において重要な役割を担っていますが、裏側矯正をすると舌が歯の裏側に装着された矯正器具に当たってしまい、その役割を果たせなくなってしまうのです。人前で喋るお仕事をされている方や、不正咬合を治療して滑舌を良くしようとする方にとっては、矯正中とはいえ、不便を強いられる現象です。今回は、この裏側矯正における滑舌悪化現象を緩和する方法についてご紹介していきましょう。

滑舌が悪くなる原因

前述のように、裏側矯正で滑舌が悪くなる原因は矯正器具にあります。

一般的なワイヤー矯正においては、「ブラケット」という3ミリ角程度の矯正器具を歯科用接着剤でそれぞれの歯に固定します。矯正時にはこれらのブラケット同士をワイヤーでつなぎ、歯を動かしたい方向に力がかかるようにしているのです。表側矯正の場合、ブラケットは歯の表側に装着するため、通常これが舌に触れることはありません。しかし、裏側矯正の場合は歯の裏側にブラケットを装着するので、どうしても舌に触れてしまいます。

このわずか数ミリの器具で口の中に影響が出るのかと、疑問に思う方もいるかもしれませんが、表側矯正でも裏側矯正でも、ほとんどの方が口の中に違和感を覚えます。小さいものでも口の中に入れば大きな違和感となってしまうのです。

そして、このブラケットには凹凸があるため、言葉を発するときに舌が引っ掛かったり、舌の動きが制限されたりして、発音に影響が出てしまうのです。特にサ行、ザ行、タ行、ダ行、ナ行、ラ行など、歯茎や歯の裏側に舌を当てて発音する音が不明瞭になる傾向があります。

影響の少ない器具もある

裏側矯正の器具を装着すると、程度の差はありますが、ほぼすべての方が舌の動きが普段とは違うと感じます。自分で滑舌が悪くなったと感じることもありますし、周囲から指摘されることもあるようです。

ただ、矯正器具を装着している期間中、ずっと滑舌が悪い状態が続くわけではありません。人はさまざまな環境において順応できますので、口の中に矯正器具を入れていても、1か月ほどで慣れてしまいます。口の中の違和感も発音も、少しの間我慢していれば慣れてきて、通常に近い生活を送れるのです。

しかし、人前で喋る仕事の方や短期間でも滑舌の悪さが気になるという方も多いと思います。そのような場合は、コンピューター解析システムを使用して作製される器具、「インコグニート」がおすすめです。よりフィット感が重視されているため、口の中で厚みを感じにくくなっています。また、「クリッピーL」、「stbライトリンガルシステム」も小型化された矯正器具なので、滑舌への影響は少なくなると考えられます。

これらのように影響の少ない矯正器具についてはカウンセリングのときに相談すれば、より詳しく説明してくれるでしょう。ご自身の歯列の状態に適応できるかどうかも併せて聞いてみてください。

上下で表側矯正と裏側矯正を使い分ける「ハーフリンガル」

滑舌への影響を抑えるための方法として、「ハーフリンガル矯正」というものもあります。裏側矯正は「リンガル矯正」とも呼ばれますが、これは英語の「lingual(舌の~)」が語源で、「舌側の矯正」という意味です。このリンガル矯正を人からよく見える上の歯列だけに施し、下の歯列は通常の表側矯正にする方法を「ハーフリンガル矯正」と呼びます。

この矯正方法の特徴は、発音に影響している下の歯列を表側矯正にすることで、滑舌への影響や口の中の違和感を軽減して、矯正している状態に慣れやすくしていることです。通常は下の歯列が上の歯列に隠れるため、矯正器具も見えにくく、また、費用が高い裏側矯正を下の歯列だけに行うため、トータルの費用を抑えることができます。

このように、ひと口に裏側矯正といっても、矯正方法や矯正器具、全体矯正か部分矯正かなどに関して、多くの選択肢があります。どれが自分に合った選択肢なのかを、担当医師とのカウンセリングを通じて十分に確認しておきましょう。

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